今回は、岸見一郎氏、古賀史健氏の著書、「嫌われる勇気」についてお話ししていきます。
自己啓発書といえば、といった本と言えると思いますが、実際に読んでみると、やはり自分の中の悩みを平易な言葉で説明してくれる貴重な本だと感じました。
多くの人が読んだこの本ですが、自分なりに感じたことをご紹介できればと思います。
ちなみに次作「幸せになる勇気」の要約と感想については、下の記事で紹介しています。
「嫌われる勇気」とセットで読むのがおすすめです!
1 この本を手に取った理由
悩み:嫌われることを恐れているから
多くの人にも当てはまると思いますが、私は昔から人から嫌われることを恐れていました。
子供の時には、必要以上に気を使って、周りの友達に自分の意見を合わせたりもしていました。
大人になるにつれて、段々自分の考えを言えるようにはなってきましたが、それでも根底には人から嫌われたくないという思いがあります。
人から嫌われるのは怖いです。
また、社会人となり仕事をし始めると、周りの人と関わり意見を交わす機会が多くなり、その中でもやはり同僚や上司から嫌われるのではないかという思いが、ちらっと頭をよぎることもありました。
そんな中この本の存在を知り、「嫌われる勇気」という題名から、私が長年感じていた恐れを解決するようなヒントを与えてくれる本なのではないかと思い、購入しました。
2 本のまとめ
筆者のメッセージ
この本は、心理学の三大巨頭と称されるアルフレッド・アドラー氏の思想を、悩める青年と哲学者の対話形式でまとめた本になっています。
そしてこの本では、「人はこの瞬間から幸せになれる」と説き、その方法についてシンプルで具体的な答えを提示しています。
かなり端折りますが、話は大まかに以下のように進んでいきます。
①トラウマは存在しない。不幸であると感じながら生きているのは、何か「不幸だと感じている方が都合がいい理由」があるからであり、それが悩みとなっている。
②その悩みは全て対人関係に起因するものである。劣等コンプレックス(劣等感を言い訳にする状態)や権力争い(怒りで相手を屈服させようとする)も対人関係を起因としたものである。
その中でわたしたちは、個人として自立し周りと調和する必要がある。これは人生のタスクと言える。
③個人として自立するためには、他者を承認・評価することをやめ、他者の課題に立ち入らないといったことが有効。
そういった自由を追い求める中で他者から嫌われることを恐れてはいけない。(嫌われる勇気)
④これは、自己中心的になろうとすることではなく、あくまで周りと調和するために行うこと。
自分は無限大の共同体の中の一部であると自覚し、横の関係で対等であるべき。その中で人は存在しているだけで価値があると考えていくことが大事。
⑤共同体感覚を身につけるためには、自己受容→他者信頼→他者貢献を実践することが必要。そこで貢献感を得ることが、つまり「幸福」である。
そのためにやるべきことは、今ここを精一杯に生きることであり、必ずしも特別な存在を目指す必要はない。
こういった流れの中で、以下のようなアドラー心理学の目標を達成できるような具体的な行動や意識が、本の中で話されていきます。
○行動面の目標
①自立すること
②社会と調和して暮らせること○この行動を支える心理面の目標
引用元)嫌われる勇気 p110
①わたしには能力がある、という意識
②人々はわたしの仲間である、という意識
なかなか受け入れられない部分はあると思いますし、理解するのが難しい部分もありますが、対話形式で書かれているので読みやすくまとめられています。
3 読んで良かったと思う部分
1 怒りについて
アドラーは、私たちは皆何かの目的に沿って生きているという「目的論」を主張しています。
その事例として、本書では「ミスをしてしまったウエイターさんを怒鳴りつけた」というエピソードを紹介しています。
本書ではその怒りを、「ウエイターさんを屈服させ、自分の言うことをきかせたかった」から感情を捏造したものだと説明しています。
確かに、怒鳴らなくてもウエイターさんには自分への被害(「料理が全然来ない」など)を冷静に説明し、しかるべき対処をお願いすることはできますよね。
怒らなくてもまともな店なら話は通じるでしょう。
ここから、「怒り」は目的のための道具であると解釈できます。
この考えに基づくと、例えば会社で理不尽に怒られた際に、その人には何か目的があると感じ、怒りではなくその目的に目を向けることができるようになると思います。
相手には目的があると考えることで、自分もストレスを感じず受け流すことができますし、怒りという道具でしか自分の意見を主張することのできない、未熟な人間なんだと相手のことを理解してあげることができます。
意味もなく怒鳴ってくる人なんかに、自分の心が乱されるのは嫌ですよね。
2 全ての悩みは対人関係である
アドラーは、「全ての悩みは対人関係である」と断言していると本書で紹介されています。
この考えは個人的にかなり衝撃的なものでした。
びっくりですが、よくよく考えてみるとそんな気がします…。
現代人には様々な悩みがあると思います。
学歴、身長、年収、外見、家庭のこと…。挙げればキリがないですよね。
その全てが人と比べたり、人との関わりの中での悩みであるというのは目から鱗でした。
確かに自分だけもしくはごく少数の人しかいない世界であればそんなものは悩みにならないのかもしれません。
ただ、現代ではそうはいきません。世界中に色々な人がいますし、メディアやSNSで簡単にその人と自分を比べてしまうことができます。
だからこそ、自立し社会と調和して暮らすというアドラーの目標を心に留め、特別な存在でなくても価値があるという思いで毎日生きていくことが大事だと感じました。
3 課題の分離
何か問題や課題があった際に、これは誰の問題・課題であるかを分離していくことが必要であるとアドラーは説明します。
それが自分の課題ではなく、相手の課題であるならば、実際に行動するかどうかは相手に任せるというものです。
確かに自分の課題だけではなく、相手の課題にまで手を出すのは、自分の負担にもなりますし、相手に課題を解決するよう強制しても、相手からの反発が待っています。
子育てなんかにも特に通ずることかもしれませんね。
そのため、相手が解決すべき課題に関しては、アドバイスを与えたり本人の意思に沿うような援助をしてあげるといったもので十分であるといえます。
例えば仕事でも、自分の主担当でないものにはそこまで深く関与せず、あくまで補助といったスタンスで取り組むようにするのが良いのではないかと感じました。
4 より大きな共同体の声を聴く
アドラーは、対人関係の中で困難にぶつかった時、「より大きな共同体の声を聴け」という原則を説いています。
私たちは、企業や家族、学校など複数の共同体に属しています。その中では色々な活動が行われますが、何かの課題や問題に立ち向かう時がきます。
悩み苦しみ、ある一つの共同体しか居場所を感じることができないとしても、もっと大きな共同体があることを考えるべきであるということです。
仮に会社がつらくて耐えられないとしても勇気を出して外に飛び出してみれば、他の会社や、企業という選択肢もあります。
関係が壊れることを恐れて行動しないのは、自由とは言えず生きづらい方法だと本書では主張しています。
確かに自分だけで思い悩んでいる時に、他の人に相談してみたり、外に答えを見出してみたりすると案外すんなり解決することはありますよね。
実践するのは難しいと思いますが、自由を選ぶという選択肢だけは持っておきたいなと感じました。
FIREという自由を選ぶ選択肢を持てるよう、日々頑張ります。
4 考えたこと
今回は、「嫌われる勇気」の書評でした。
初めて読んだ時は本を読む手が止まりませんでした。そのくらい、今まで自分が抱いていた悩みの理由と解決策が示されています。
ただ、人によっては本の内容に違和感や嫌悪感を感じる人もいるのではないかと思います。
アマゾンのレビューなんかでも、ちらほら批判的な内容を書かれている方もいます。
また、この本に書かれている内容を完璧に理解し実践できている人など、ほぼいないと思います。しかし、読んでできるところから実践してみるだけでも、自分の心が軽くなるのではないでしょうか。
少なくとも私は、この本を読んだ後心が少し軽くなった気がします!
まだ読んだことがない方にもぜひ手に取ってみて欲しいと思える本です。
次作、「幸せになる勇気」の要約と感想はこちらからどうぞ。
——————————————————