今回は、岸見一郎氏、古賀史健氏の著書、「幸せになる勇気」についてお話ししていきます。
「嫌われる勇気」の続編にあたる本であり、「嫌われる勇気」と同様、人生における悩みを平易な言葉、そして具体的な解決策を提示してくれる貴重な本だと思いました。
読んで感じたことについて書いていきます。
ちなみに前作「嫌われる勇気」の要約と感想については、下の記事で紹介しています。
まずは、「嫌われる勇気」から読むことをおすすめします!
1 この本を手に取った理由
興味:アドラー心理学についてより深く知りたいと感じた
私は前作の「嫌われる勇気」を最初に購入し読了しました。
「嫌われる勇気」の中では、アドラーの考え方に触れることができ、その考え方の新鮮さに驚き、また自分が考えていたこともアドラー心理学で説明がされているということに、とても面白さを感じました。
読んでいて「そうそう!」と思うことが非常に多かったです。
続編である「幸せになる勇気」では、子供への教育という例を提示しながら、本当の自立や人生のタスクについて、また「愛」とはというテーマで、アドラーの考えを紹介しています。
「嫌われる勇気」でアドラー心理学の面白さを知った私は、あまり考えずに続編を購入しました。
2 本のまとめ
筆者のメッセージ
この本は前作「嫌われる勇気」同様、心理学の三大巨頭と称されるアルフレッド・アドラー氏の思想を、悩める青年と哲学者の対話形式でまとめた本になっています。
そして引き続き、「人はこの瞬間から幸せになれる」という前提のもと、その方法についてシンプルで具体的な答えを提示しています。
かなり端折りますが、話は大まかに以下のように進んでいきます。
①前提として、アドラー心理学は哲学であり、考え方を知った上で歩き続けていくことが必要。過去は見方によって事実が変わるため、これからどうするかに目を向けるのが生産的。
②教育の目標は「自立」である。その中ではこちらから子供を尊敬する必要がある。(もちろん子供以外も)
賞罰意識をなくし、ありのまま自分で良いということや、自分の人生は自分で選ぶことができるということを教えてあげる。
③賞罰意識は競争関係が生まれる原因である。もともと人間が持っている共同体感覚を掘り起こしてあげるためにも、子供が持っている劣等感や特別でいたいという感情を理解し、自分で自分を認められる人になるようサポートする必要がある。
そして人と協力関係を築くことの必要性を教える。
④人は一人では生きていけないからこそ、協力関係が必要であり、我々はその中で信用し分業(仕事のタスク)してきた。
その他に無条件の信頼(交友のタスク)も必要な要素であるが、それには、自分から能動的に信じ続けることが必要である。
⑤最後の愛のタスクは、今までとは違い主語が「わたし」ではなく「わたしたち」になる。
赤ちゃんの段階では愛されることから始まるが、愛することにシフトしていくことが幸福への第一歩。
私たちは今を精一杯に生きていけば、どんな人でも愛することができるし、その奇跡が運命なのである。
前作「嫌われる勇気」では、個人的な自立や共同体感覚といったテーマで語られていますが、「幸せになる勇気」では、教育や、仕事・交友・愛のタスクといったテーマが中心となっています。
こういった、日常の具体的な行動についてのヒントが本書の中心です。
3 読んで良かったと思う部分
1 過去をどう捉えるか
前作でも「トラウマは存在しない」など、過去についての考え方が紹介されていましたが、今回も過去の捉え方について触れられています。
例えば、「外で野良犬に足を噛まれた後、通りすがりの青年が自分を助けてくれた」というエピソードでは、「野良犬に足を噛まれた」という点に焦点を当てると、外には危険がたくさん潜んでいるといった見方になります。
しかし、「通りすがりの青年が助けてくれた」という点に焦点を当てると、外には思いやりを持った優しい人がいるという見方になります。
このように、過去に対してどのような見方をするかで、解釈が異なってくるということが説明されています。
そして、だからこそ、過去どうだったかではなく、これからどうするかに目を向けた方がよっぽど生産的であると主張しています。
確かにもう過去は変えられないことですし、これからをどうするかという未来志向の考え方が前向きに生きるためには必要でしょう。
過去の「事実」は変えられませんが、今から頑張ることで過去の「見方」は変えることができます!
外交問題などでも、自国と他国の認識が食い違っているというニュースをよく見かけますよね。
これも、過去がどうだったかを深掘りしすぎるのではなく、これからの対話の中でどう解決していくかに焦点を当てて話し合った方が生産的だなと感じました。
2 全ての喜びも対人関係である
前作「嫌われる勇気」の中では、「全ての悩みは対人関係である」という考えが紹介されています。
しかし本書では、その続きとして「全ての喜びも対人関係である」という幸福の定義が隠されているということが紹介されています。
だからこそ私たちが幸せになるためには、対人関係の中で、「仕事・交友・愛」のタスクに立ち向かいならないわけです。
誰かと一緒に感情を分かち合うというのは、人生においてとても重要なことだと思います。
どんなに楽しいことでも、一人で幸せを感じるのは限界がありますよね。
悲しみも誰かと分かち合えば立ち直りやすくなるでしょう。
確かに対人関係は悩みになることは多いですが、一人が続くと「貢献感」も薄くなり、より孤独を感じてしまうのかもしれません。
快楽ではなく本当の幸福のためには、対人関係が絶対に欠かせないと言えると思います。
3 運命の人などいない
ドラマや漫画では、「この人が運命の人だ」といった描写を見ることがあります。
しかし本書では、運命の人など存在しないと説きます。
え、運命の人に会いたいよ。
よく「好き」と「愛する」の違いといった記事などを見ることがありますよね。
何となく自分の中では、「好き」の延長線上に「愛する」がある感じがしています。
最初は何となく好きだと思い付き合ってみて、その後、その人のことを知っていく中で愛するに変わっていくのかなという感じです。
本書では、恋が結ばれ、その後の関係において他者を愛するのが、愛のタスクであると説明されています。
愛するという過程の中でその人を運命の人にしていくのであって、自分から能動的に愛さずに運命の人が現れるといった感覚は間違っているということでしょう。
そして自分から他者を愛することで、「わたし」ではなく「わたしたち」の関係を築いていくことになっていきます。
その「わたしたち」という関係がひいては共同体感覚へ繋がっていくと説明されています。
与える人が与えられるということですね。
アドラーの提唱する共同体感覚を完全に掘り起こすためには、仕事・交友・愛のタスクで構成される人生のタスクに立ち向かう必要があるというところにつながります。
なかなかそこまで考えて行動できるかというと難しいと思いますが、誰かを愛するということが幸福につながるというのは、現時点でも納得感があります。
本当に本書の内容が理解できるようになるのは、もっと後なのかもしれません。
4 考えたこと
今回は「幸せになる勇気」の書評でした。
書いてあること自体はわかりやすいのですが、実践するのはとても難しい内容が書かれています。
本書でも、アドラーの教えを知ってからが試練の日々であると言っており、実践の難しさが伺えます。
ただ、一度読んでみると仕事や交友関係、子育てや恋愛などの悩みの解決のヒントとなると思うので、ぜひ読んでみてほしいと思います。
前作、「嫌われる勇気」の要約と感想はこちらからどうぞ。
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